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紀北町の農地転用|条例の届出が先

紀北町の農地転用は、紀北町農業委員会を経由して三重県知事が許可します。町は許可権者ではありません。そして紀北町には、農地転用とは別に「紀北町生活環境の保全に関する条例」があります。1,000平方メートル以上の埋立てには町長への届出が必要で、条例は「その届出は関係法令等の申請より前にしなければならない」と定めています。つまり農地転用の申請より先です。

このページには、紀北町だから違うことだけを書いています。
制度そのもの(4条と5条のちがい、罰則、許可が下りたあとの報告)は → 三重県の農地転用|申請先と29市町の件数


紀北町は「県が許可を出す町」です

紀北町は、こう案内しています。

農地の所有者が、自らの農地を農地以外の用途に転用する場合は、農業委員会を経由して県知事へ申請して、許可を受けなければなりません。

三重県では19市町が転用許可の権限を県から移されていますが(指定市町村)、紀北町はそこに入りません。
紀北町農業委員会の役割は、審査して意見書をつくり、県知事へ送ることです。

★このため、町の総会は終点ではなく通過点になります。
菰野町・いなべ市と同じ型です。そちらのページでは、申請から許可までの日数を法令の数字で足し算しています。

⚠ 隣の度会町・大紀町は指定市町村で、町が自分で許可を出します。
同じ度会郡でも、許可を出す人が違います。

★同じ東紀州の御浜町も県知事許可です。ただし締切は毎月10日で総会は当月末、そして12月は総会の予定がありません。紀北町とは日程の組み方がまったく違います。


🔴 1,000平方メートル以上の埋立ては、農地転用より先に条例の届出です

紀北町には「紀北町生活環境の保全に関する条例」(2019年7月1日施行)があります。
町は、こういう経緯で作ったと説明しています。

公害を発生させるおそれのある事業活動や大規模な土砂の埋め立て行為などが、周辺の住民に対する十分な説明がない状態で進められる事例などがあり、町民のみなさまからは環境への影響に対する不安や対応を求めるお声が寄せられていました。

届出が要るのは、この場合です

土地の埋立て等で次のア又はイの開発行為
ア 環境配慮区域の区域内又は隣接地で施工する事業のうち実測面積が1,000平方メートル以上の土地の埋立て等(その区域に隣接又は近接する土地において、当該事業の事業主が、当該事業を施工しようとする日前3年以内に完了させた事業の事業区域の面積又は施工中の事業の事業区域の面積を合算して実測面積が1,000平方メートル以上になるものを含む。)
(条例第7条第1項第3号)

★カッコの中が大事です。
隣接地や近接地で、3年以内に終わらせた事業や施工中の事業の面積を合算して1,000平方メートルになる場合も対象です。
分けて施工すれば逃れられる、という作りになっていません。

そして、順番が条文で決まっています

開発行為の届出は関係法令等に基づく許可、認可等の申請又は届出を行う前にしなければならない。
(条例第7条第3項)

★「関係法令等に基づく許可、認可等の申請」には、農地転用の許可申請が含まれます。
つまり、農地転用の申請書を出す前に、条例の届出を済ませておくことになります。

⚠ 鳥羽市にも似た条例がありますが、時期の決め方が違います。

紀北町 鳥羽市
対象 1,000㎡以上の土地の埋立て等(環境配慮区域内・隣接地) 1,000㎡以上の区画形質の変更(用途地域外)
いつまでに ★他の法令の申請より前 ★着工30日前まで
合算 ★3年以内の事業と合算する定めがある 記載なし
相手の承諾 ★土地所有者の承諾が届出に必要 地域住民等説明会・自然保護協定

★どちらも1,000平方メートルという同じ線ですが、「いつまでに」が違います。
紀北町は工程の順番そのものを条例で決めています。


この条例は、実際に運用されています

紀北町は、条例第19条に基づいて違反事実を公表しています。当サイトが確認した時点で2件あります。

どちらも令和7年2月27日に措置命令が出されたもので、内容はこうです。

違反の内容 届出をせずに盛土を行った(2,840.607平方メートル/3,278.37平方メートル)
もう1点 届出に必要な土地所有者の承諾も得ていなかった
経緯 条例第18条第1項の指導・勧告に従わなかったため、同条第3項の措置命令
命令の中身 外部から新たに土砂等を搬入しないこと/使用された土砂等を全量撤去し、原形復旧すること/撤去した土砂等を法令等に基づき適正に処理すること/撤去に係る計画書を着手前に提出し承認を得ること
計画書の添付 施工場所の土地所有者の立入承諾書、撤去土砂等の搬出先の土地所有者の同意書
履行期限 令和7年3月28日までに原形復旧

★「全量撤去して原形復旧」です。入れた土をすべて出し、元に戻すよう命じられています。
★しかも撤去先の土地所有者の同意書まで求められます。出した土をどこへ持っていくかまで、証明が要るということです。

⚠ 当サイトは、公表されている事業者の氏名・住所・地番を掲載しません。
書きたいのは「この条例は運用されており、指導と勧告のあとに措置命令と公表まで進んだ実例がある」という事実だけです。

⚠ また、当サイトはこの事案について事実関係を独自に調べたわけではありません。紀北町の公表資料に書かれていることをそのまま整理しています。


🔴 申請書を出す前に、担当の農業委員から署名をもらいます

紀北町の農地転用の申請には、当サイトが調べた19市町でここだけの書類があります。

申請書類を作成し、農地の所在地を担当する農業委員による書類の内容確認後、農業委員会へ提出してください。
「許可申請書の書類確認願い」は、農業委員により申請書類の内容が確認されたことを証する書類です。書類確認後に農業委員から署名捺印をいただいてください。担当の農業委員については、事務局までお問い合わせください。

★事務局へ出す前に、その農地を担当する農業委員に会って、書類を見てもらう工程があります。

段取り
1 事務局(0597-46-3116)に電話して、その農地の担当農業委員が誰かを聞く
2 書類一式をそろえて、担当委員に内容を確認してもらう
3 「許可申請書の書類確認願い」に署名捺印をもらう
4 締切(毎月25日)までに農業委員会へ提出

⚠ ここは日程に直接効きます。担当委員の都合がつかなければ、その月の締切に間に合いません。
★締切の直前に書類を仕上げる組み方だと、まず間に合いません。逆算するなら、締切の2週間前には書類を完成させておくことになります。

★紀北町は農業委員14名・農地利用最適化推進委員4名で構成されています。


盛土と太陽光は、隣接地権者の同意書が要ります

紀北町は、次の場合に「隣接地権者の同意書(任意様式)」を求めています。

  • 盛り土を伴う場合
  • 太陽光発電事業を行う場合

隣接地権者の所在が不明などにより同意書が提出できない場合は、その経緯や理由を記載した理由書を提出してください。

★同意が取れないときの逃げ道は用意されていますが、「取ろうとした経緯」を書かされます。

★あわせて、転用する農地が第2種農地である場合は「代替地の検討結果(任意様式)」が要ります。
紀北町は許可基準をこう整理しています。

農地区分 転用が認められるか
農用地区域内農地 原則不許可
第1種農地 原則不許可
第2種農地 許可(※他の土地で事業ができない理由が妥当でないと判断される場合は不許可)
第3種農地 許可

★「第2種農地だから通る」ではありません。代替地を検討した結果を示せなければ不許可になりうる、と町が明記しています。


締切は毎月25日。総会は翌月下旬です

申請書提出の締切は、毎月25日です(ただし、締切り日が土・日、祝日等の場合はその翌日の開庁日)。
申請した月の翌月下旬の総会で内容を審議した上で、農業委員会から県知事へ意見書を送付し、県知事が許可の可否を決定します。

★締切が「毎月25日」なのは四日市市と同じですが、休日の扱いが逆です。

休日にあたったとき
紀北町 翌日の開庁日=後ろへずれる(締切が遅くなる)
四日市市 前送り=早くなる

★総会は「翌月下旬」なので、締切から総会まではおよそ1か月です。
そこからさらに県知事の判断が入ります。紀北町の総会は終点ではありません。

★申請書は3部、添付資料は原本1部と写し1部の計2部です。


農地のまま土を入れる工事にも、承認が要ります

紀北町には「農地改良工事」という別の手続きがあります。

耕作者が農地利用の改善を目的として、田及び畑への盛土および切土等を行う場合は、農地改良工事の承認を受けていただく必要があります。
すでに農地改良工事を実施してからの申請は認められません。必ず着工前に申請してください。

★「すでに実施してからの申請は認められません」とはっきり書かれています。
農地転用には大台町のように「始末書」であとから申請する道がありますが、農地改良工事にはその記載がありません。

★こちらにも隣接地権者の同意書と、担当農業委員の「書類確認願い」が要ります。締切は転用と同じ毎月25日です。

★そして町は、農地改良工事のページから条例へ案内しています。

実測面積が1,000平方メートル以上の土地の埋立ての際は、「紀北町生活環境の保全に関する条例」の対象となる場合があります

→ 農地に土を入れる工事は、①農地改良工事の承認 ②条例の届出 の両方に当たることがあります。

⚠ 南伊勢町にも似た手続き(農地形状変更(埋立て)誓約書)があります。
呼び名も出すものも町ごとに違うので、「埋立てくらいなら」で進めないでください。


🔴 紀北町は、三重県の事務処理要領を公開しています

紀北町のページには「農地法第4条、第5条事務処理要領」というPDFが置かれています。
これは紀北町だけの文書ではなく、三重県の事務処理要領です。当サイトが調べた19市町で、これを公開しているのは紀北町です。

★ここに、他の市町のページには書かれていないことが載っています。

資材置場・駐車場は、完了報告のあとも3年間報告が続きます

通常、転用許可には「許可の日から3か月及びその後1年ごと」の進捗報告が条件として付きます(農地法第4条第7項)。
要領によると、これに加えて次の扱いがあります。

恒久転用知事許可4ha以下で、「資材置場等目的での農地転用許可の取扱いについて(令和6年3月28日付け5農振第3179号農林水産省農村振興局長)」に基づき、工事完了報告日から3年間の6か月ごとの事業の実施状況報告を条件に付ける場合

★資材置場・駐車場など建築物の建築等を伴わない転用は、工事完了の報告をしたあとも、3年間・6か月ごとに実施状況を報告する条件が付くことがあります。

⚠ 資材置場は、建設会社がいちばん多く関わる転用です。
「完了報告を出したら終わり」ではない場合がある、という点は工程表に入れておいてください。

無断転用の「始末書」に何を書くかも決まっています

無断転用は始末書(違反転用年月日、経緯、無断転用に至った理由、今後は適法におこなう旨を記した書面)を提出します。(添付書類は始末書と現況写真)

★大台町の添付書類一覧にある「始末書」の中身が、県の要領で定義されていました。
書くのは4点です。違反した年月日/経緯/なぜそうなったか/今後は適法に行う旨。

そのほか、要領で確認できたこと

登記事項証明書 登記情報提供サービス(民事法務協会)の照会番号の添付も可(⚠ 鈴鹿市は使えないと案内しています。市町で運用が違います)
造成計画(縦断・横断)図 盛土及び切土による土砂流出等の被害が生ずる恐れがある場合に必要
地積測量図 申請面積が登記事項証明書と30%以上異なる場合に必要
住宅所要面積の必要性を示す資料 一般住宅500㎡超・農家住宅1,000㎡超・住宅の建蔽率が22%未満の場合に必要

★亀山市のページに書いた「建蔽率22%」は、亀山市だけの基準ではなく県の要領のものでした。


紀北町には市街化区域がありません

紀北町は紀伊長島都市計画区域(3,557ha)に含まれますが、これは「区域区分の無い都市計画区域(用途地域無し)」です(三重県「都市計画区域決定状況」令和6年1月4日現在)。

★線引きがされていないので市街化区域はなく、用途地域もありません。

このため、紀北町では「市街化区域だから届出で済む」という道がありません。
農地法が届出で足りるとしているのは市街化区域内の農地です(第4条第1項第7号・第5条第1項第6号)。

★統計もそのとおりです。令和5年の紀北町の農地転用29件は、29件すべてが許可で、届出は0件でした。


紀北町の農地転用は年間何件ですか?

令和5年は29件です。三重県29市町のなかで19番目に多い町です。

区分 紀北町 三重県計
農地法4条 許可(自己転用) 2 172
農地法5条 許可(転用目的の売買・貸借) 27 1,840
市街化区域内の届出 0 804
合計 29 2,816

★令和4年は22件で、令和5年は29件です。単年の増減なので、傾向とは言えません。

出典は農林水産省「農地の権利移動・借賃等調査」確報 第7編 市町村別編(令和5年)です。推計ではなく実数です。


🔴 建設業をしている方へ:請け負った側にも命令が届きます

農地法は、原状回復等の措置を命じられる相手を4つ挙げています。

一 第四条第一項若しくは第五条第一項の規定に違反した者又はその一般承継人
二 第四条第一項又は第五条第一項の許可に付した条件に違反している者
三 前二号に掲げる者から当該違反に係る土地について工事その他の行為を請け負つた者又はその工事その他の行為の下請人
四 偽りその他不正の手段により、第四条第一項又は第五条第一項の許可を受けた者
(農地法第51条第1項)

★3号です。違反転用の土地について工事を請け負った者と、その下請人も対象です。
発注者が無許可だった場合、工事をした建設会社と下請にも、県知事から原状回復等の命令が届きうるということです。

そして、この命令に従わなかった場合の罰則はこうです。

本人 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(農地法第64条第3号)
法人 1億円以下の罰金(同法第67条第1号)
そのほか 命令に従わないと、その旨と土地の地番等が公表されることがある(同法第51条第3項)

★紀北町では、これとは別に条例違反でも公表が行われています。
農地法でも条例でも、「公表」という手段が用意されているということです。

★だから、紀北町で造成や盛土を請け負うときに確かめることは3つです。

#
1 その土地の登記の地目(現況が草地でも「田」「畑」なら農地法の対象)
2 農地転用の許可が下りているか(申請中ではなく、下りているか)
3 1,000平方メートル以上の埋立てなら、条例の届出が済んでいるか(届出は他の法令の申請より前)

★発注者の「大丈夫だから」を書面で確かめずに着工しないでください。

→ 三重県で建設業許可を取るには|窓口・手数料・審査期間


紀北町の農地転用に対応している行政書士事務所

現在、掲載事務所を募集しています。

事務所をお探しの方は、三重県行政書士会の会員検索をご利用ください。

当サイトについて: 当サイトは行政書士事務所の情報を掲載しているものであり、
紹介・あっせんを行うものではありません。掲載にあたっては、
所属する行政書士会と登録番号を明記しています。
また、事務所同士の優劣比較やランキングは行いません。


よくある質問

Q. 紀北町の農地転用は、どこに出しますか?
A. 紀北町農業委員会(農林水産課内・0597-46-3116)です。ただし許可を出すのは三重県知事です。町は審査して意見書を県へ送ります。

Q. 締切はいつですか?
A. 毎月25日です。土・日・祝日等にあたるときは翌日の開庁日になります(締切は後ろへずれます)。総会は申請した月の翌月下旬です。

Q. 申請書を出す前に何かすることはありますか?
A. あります。その農地を担当する農業委員に書類を確認してもらい、「許可申請書の書類確認願い」に署名捺印をもらう必要があります。担当委員は事務局にお問い合わせください。この工程があるので、締切直前に書類を仕上げる組み方は避けてください。

Q. 盛土をする場合、何か追加で要りますか?
A. 隣接地権者の同意書(任意様式)が要ります。所在が不明などで出せない場合は、経緯や理由を記載した理由書を出します。太陽光発電事業の場合も同じです。

Q. 1,000平方メートル以上の埋立てをします。農地転用の許可だけでいいですか?
A. いいえ。「紀北町生活環境の保全に関する条例」の届出が必要になる場合があります。条例は、その届出を関係法令等の申請より前にしなければならないと定めています(第7条第3項)。つまり農地転用の申請より先です。なお、隣接・近接地で3年以内に完了した事業や施工中の事業の面積を合算して1,000平方メートル以上になる場合も対象です。

Q. 条例の届出をしなかったらどうなりますか?
A. 町は指導・勧告を行い、従わないときは停止命令や措置命令を出せます(条例第18条)。紀北町は条例第19条に基づいて違反事実を公表しており、当サイトが確認した時点で2件あります。いずれも土砂の全量撤去と原形復旧が命じられています。

Q. 農地のまま土を入れるだけなら、手続きは要りませんか?
A. 「農地改良工事」の承認が要ります。そして町は「すでに農地改良工事を実施してからの申請は認められません。必ず着工前に申請してください」と明記しています。

Q. 資材置場にした場合、報告はいつまで続きますか?
A. 通常の「許可の日から3か月及びその後1年ごと」に加えて、工事完了報告日から3年間・6か月ごとの実施状況報告が条件に付くことがあります(三重県の事務処理要領。根拠は令和6年3月28日付け5農振第3179号)。

Q. 市街化区域内なら届出で済みますか?
A. 紀北町には市街化区域がありません。紀伊長島都市計画区域(3,557ha)に区域区分(線引き)がされておらず、用途地域もないためです。令和5年の届出も0件でした。

Q. 手数料はいくらですか?
A. 紀北町は農地転用の手数料を公表していません。(県内で「無」と明記しているのは桑名市です。)