建設業許可の5つの要件をわかりやすく解説|どこでつまずくか

建設業許可の要件は5つです。①適切な経営能力と社会保険加入 ②専任技術者 ③誠実性 ④財産的基礎(自己資本500万円以上など)⑤欠格要件に該当しないこと。実際につまずくのは①と②の2つにほぼ集中します。

要件を1つずつ丁寧に読み込む前に、先に結論を言っておきます。

③の誠実性と⑤の欠格要件は、通常の事業者ならまず問題になりません。
④の財産的基礎も、預金残高証明書で対応できるケースが大半です。

本当に時間がかかるのは、①の「経営経験を5年証明できるか」と、②の「技術者を置けるか」です。
この2つが揃わないと、どれだけ書類を作っても許可は下りません。だからここから確認します。


建設業許可の要件は、全部でいくつありますか?

5つです。 建設業法第7条・第15条に定められています。

# 要件 つまずきやすさ 根拠
1 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力
Ⅰ 適切な経営能力を有すること
Ⅱ 適切な社会保険等に加入していること
★最難関 法第7条第1号
2 専任の技術者がいること ★難関 法第7条第2号/第15条第2号
3 請負契約に関して誠実性があること 法第7条第3号
4 請負契約を履行するに足りる財産的基礎または金銭的信用 法第7条第4号/第15条第3号
5 欠格要件に該当しないこと 法第8条

なお、特定建設業の許可を受ける場合は、2の技術者要件と4の財産的基礎が加重されます。
一般建設業より条件が厳しくなる、ということです。


要件1:経営経験は、何年必要ですか?

原則として5年です。 ただし、令和2年10月の法改正で、5年の経験がなくても許可を取れる道が新しくできました。

パターンA:常勤役員等が自分で経験を持っている場合

会社の常勤役員等(法人なら取締役など、個人なら本人または支配人)のうち1人が、次のいずれかに該当すればクリアです。

経験の種類 必要年数
建設業に関する経営業務の管理責任者としての経験 5年以上
建設業に関する経営業務の管理責任者に準ずる地位での経営管理経験(執行役員等として、取締役会の決議で業務執行権限の委譲を受けたもの) 5年以上
建設業に関する経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験 6年以上

「建設業に関し」とは、すべての建設業の種類を指します。業種ごとの区別はありません。
内装工事の経営経験でも、とび・土工工事の許可申請に使えるということです。ここは緩やかです。

注意点:この経験は「常勤時の経験」に限られます。非常勤だった期間は認められません。

パターンB:常勤役員等+補佐する人でチームを組む場合(令和2年10月〜)

これが改正で新しくできた道です。

「5年の経営経験を持つ人がいない」という理由で許可を諦めていた会社に、
常勤役員等と、それを直接補佐する人を組み合わせて体制を作れば認めるという選択肢が加わりました。

例えば、常勤役員等が「建設業に関し2年以上の役員等経験+通算5年以上の役員等経験」を持ち、
その人を直接補佐する担当者として、財務管理・労務管理・業務運営の経験を持つ人を配置する、といった形です。

改正前は「個人」の要件でしたが、改正後は「組織としての経営体制」を見る形に変わりました。

要件の細かい組み合わせは複雑なので、「経営業務の管理責任者(経管)の要件」で詳しく解説しています。


要件1-Ⅱ:社会保険に入っていないと、許可は取れませんか?

取れません。令和2年10月の改正で、社会保険への加入が許可の要件になりました。

対象は次の3つです。

保険 対象
健康保険 適用事業所であること
厚生年金保険 適用事業所であること
雇用保険 適用事業所であること

改正前は「加入していなくても許可は取れる(指導はされる)」でしたが、改正後は要件そのものです。
未加入のままでは申請しても許可されません。

「今まで入っていなかった」という場合、加入手続きから始める必要があるため、
許可取得までのスケジュールに数か月上乗せして考えておく必要があります。

→ 詳しくは「社会保険に入っていないと許可は取れない」をご覧ください。


要件2:専任技術者は、どうやって用意しますか?

資格を持っている人を置くか、実務経験で証明するかの2通りです。

証明の方法 内容
① 国家資格等 1級・2級施工管理技士、技術士、建築士など。証明が最も早い
② 実務経験 許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験
③ 指定学科の卒業+実務経験 高卒(指定学科)+5年以上、大卒(指定学科)+3年以上

そして重要な条件が2つあります。

  1. 営業所ごとに、常勤で配置する必要があります。 現場に出ずっぱりの人や、他社と兼務している人は認められません。
  2. 経営業務の管理責任者との兼任は可能です。 同一営業所内であれば、1人が両方を兼ねられます。小規模な会社ではこの形が一般的です。

実務経験10年の証明が、実務上いちばん手間のかかる作業です。
過去10年分の工事請負契約書や注文書、その期間の常勤性を示す資料を揃える必要があり、
書類が残っていないと証明できません。

→ 詳しくは「専任技術者の要件|資格か、実務経験10年か」をご覧ください。


要件3:誠実性とは、何を見られますか?

請負契約に関して、不正や不誠実な行為をするおそれが明らかでないことです。

具体的には、建築士法・宅地建物取引業法などで免許の取消処分を受けてから5年を経過しない者などが該当します。
通常の事業者であれば、まず問題になりません。


要件4:お金はいくら必要ですか?

一般建設業なら、自己資本500万円以上か、500万円以上の資金調達能力です。

一般建設業 特定建設業
条件 次のいずれかに該当 次のすべてに該当
イ 自己資本の額が500万円以上 イ 欠損の額が資本金の20%を超えていない
500万円以上の資金を調達する能力がある 流動比率が75%以上
ハ 許可申請の直前過去5年間、許可を受けて継続して建設業を営業した実績がある ハ 資本金2,000万円以上、かつ自己資本4,000万円以上

「自己資本」とは、貸借対照表の「純資産合計」の額です。

「500万円以上の資金を調達する能力」は、通常取引金融機関の預金残高証明書で証明します。
基準日は申請日の直前4週間以内である必要があり、証明書が2枚以上になる場合は基準日を揃える必要があります。

よくある誤解: イ(自己資本)とロ(資金調達能力)を合算することはできません。
「自己資本300万円+預金200万円で500万円」という証明の仕方は認められません。

→ 詳しくは「財産的基礎500万円はどう証明する?残高証明書の落とし穴」をご覧ください。


要件5:欠格要件に該当すると、どうなりますか?

申請は拒否されます。 また、許可を受けた後に該当した場合は、許可が取り消されます。

主なものは次のとおりです。

  • 許可申請書やその添付書類に、重要な事項について虚偽の記載があるとき
  • 成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ない者
  • 不正の手段で許可を受けたことにより、許可を取り消されて5年を経過しない者
  • 建設業法に違反して罰金以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わってから5年を経過しない者
  • 暴力団員またはその関係者

対象は法人の役員等・個人事業主本人だけでなく、令3条の使用人(支店長など)にも及びます。
役員が多い会社では、全員分の確認が必要です。

→ 詳しくは「欠格要件|許可が取れない・取り消される条件」をご覧ください。


自社が要件を満たすか、どう確認すればいいですか?

次の順番で確認するのが、いちばん無駄がありません。

確認すること 理由
1 5年以上の経営経験を証明できる人がいるか ここがなければ、他がすべて揃っても許可は下りない
2 専任技術者を常勤で置けるか(資格 or 実務経験10年) 同上。人が確保できなければ先に進めない
3 社会保険に加入しているか 未加入なら、加入手続きに数か月かかる
4 自己資本500万円 or 預金500万円があるか 直前4週間以内の残高証明で対応できる
5 役員等に欠格要件に該当する人がいないか 該当者がいれば体制の見直しが必要

1と2で止まる会社が大半です。 逆に、この2つがクリアできていれば、あとは書類の作業になります。


お住まいの都道府県の情報

要件そのものは建設業法で定められているため全国共通ですが、
証明資料として何を求められるかは、都道府県によって運用が異なります。

都道府県 ページ
三重県 三重県で建設業許可を取るには

※順次追加していきます。


よくある質問

Q. 経営経験の5年は、他社での経験でもいいですか?
A. 認められます。前職の会社で取締役として建設業の経営に携わっていた期間も対象です。ただし、その期間を証明する資料(当時の会社の履歴事項全部証明書、工事請負契約書など)が必要になります。

Q. 経営業務の管理責任者と専任技術者は、同じ人が兼ねられますか?
A. 同一営業所内であれば兼任できます。小規模な会社では、社長が両方を兼ねる形が一般的です。

Q. 個人事業主でも許可は取れますか?
A. 取れます。要件は法人と同じで、個人の場合は「本人または支配人」が経営能力の要件を満たしているかを見ます。

Q. 要件を満たしていない状態で申請するとどうなりますか?
A. 拒否されます。知事許可の申請手数料は不許可でも返還されませんので、要件を満たしているか確認してから申請してください。