監理技術者補佐とは、監理技術者の職務を補佐する人のことです。工事現場に監理技術者補佐を専任で置くと、その現場の監理技術者は専任でなくてよくなり、2つの現場まで兼務できます。なれるのは、その工事の主任技術者の資格を持つ人のうち1級の第一次検定に合格した人(1級施工管理技士補)か、その工事の監理技術者の資格を持つ人です。ただし機械器具設置工事・さく井工事・消防施設工事・清掃施設工事の4業種では、後者に限られます。
この制度が何のためにあるか
技術者が足りないからです。
監理技術者は、原則として現場ごとに専任でなければなりません(法第26条第3項)。専任とは他の現場と掛け持ちできないという意味なので、現場が2つあれば監理技術者も2人要ることになります。
そこで、現場に「補佐する人」を専任で置けば、監理技術者本人は専任でなくてよいという例外が設けられました。1人の監理技術者が2現場を見られるようになります。
専任の例外は2つあります。混同しないでください
建設業法第26条第3項のただし書には、専任でなくてよい場合が2つ並んでいます。 実務では「専任特例1号」「専任特例2号」と呼び分けられています。
| 1号(遠隔での兼務) | 2号(監理技術者補佐) | |
|---|---|---|
| 何を置くか | 連絡員を各現場に置く | 監理技術者補佐を各現場に専任で置く |
| 対象になる人 | 主任技術者・監理技術者の両方 | 監理技術者だけ(主任技術者は対象外) |
| 請負代金の上限 | 1億円未満(建築一式は2億円未満) | 上限なし |
| 兼務できる現場数 | 2まで | 2まで |
| 根拠 | 法第26条第3項第1号 施行令第28条・第30条 |
法第26条第3項第2号 施行令第29条・第30条 |
★2号には請負代金の上限がありません。 これが1号との最も大きなちがいです。大規模な工事で使えるのは2号のほうです。
⚠ 1号と2号を混ぜて使うことはできません。 同一の監理技術者が、1号を使った現場と2号を使った現場を兼務することはできないとされています(監理技術者制度運用マニュアル 三(2)⑤)。
監理技術者補佐を置くと、何が変わるか
条文はこうなっています。
当該建設工事の工事現場に、当該監理技術者の行うべき第26条の4第1項に規定する職務を補佐する者として、当該建設工事に関し第15条第2号イ、ロ又はハに該当する者に準ずる者として政令で定める者を専任で置く場合における監理技術者
(建設業法第26条第3項第2号)
読み解くと、次の3つです。
| # | |
|---|---|
| 1 | 監理技術者補佐は「専任」でなければならない。補佐のほうが現場に張り付きます |
| 2 | その現場の監理技術者は専任でなくてよくなる |
| 3 | ただし現場は2つまで(法第26条第4項・施行令第30条) |
⚠ 現場が1つでも監理技術者補佐を置くことはできます。 ただしその場合、その監理技術者は他の現場を兼務できません(同マニュアル 三(2)②)。「補佐を置いた=必ず2現場見られる」ではありません。
★誰が監理技術者補佐になれるか
施行令第29条が要件を定めています。
法第26条第3項第2号の政令で定める者は、次の各号のいずれかに該当する者とする。
一 法第7条第2号イ、ロ又はハに該当する者のうち、法第26条の4第1項に規定する技術上の管理及び指導監督であつて監理技術者がその職務として行うべきものに係る基礎的な知識及び能力を有すると認められる者として、建設工事の種類に応じ国土交通大臣が定める要件に該当する者
二 国土交通大臣が前号に掲げる者と同等以上の能力を有するものと認定した者
この「国土交通大臣が定める要件」は、令和2年9月30日国土交通省告示第1057号に書かれています。 内容は次の2つです。
| 要件 | |
|---|---|
| ① | 請け負った建設工事の種類にかかる主任技術者の資格を持つ人のうち、1級の技術検定の第一次検定に合格した人(=1級施工管理技士補) ★ただし建設工事の種類に応じて指定された検定種別に限る |
| ② | 請け負った建設工事の種類にかかる監理技術者の資格を持つ人 |
⚠ ①の「検定種別に限る」を見落とさないでください
1級の第一次検定に合格していれば、どの工事の補佐にもなれるわけではありません。 工事の種類ごとに、使える検定種目が決まっています。
| 検定種目(すべて1級) | 補佐になれる主な工事 |
|---|---|
| 土木施工管理 | 土木一式・とび土工コンクリート・石・鋼構造物・舗装・しゅんせつ・塗装・水道施設 ほか |
| 建築施工管理 | 建築一式・大工・左官・石・屋根・タイル・鋼構造物・鉄筋・板金・ガラス・塗装・防水・内装仕上・熱絶縁・建具・解体 ほか |
| 電気工事施工管理 | 電気工事 |
| 管工事施工管理 | 管工事 |
| 電気通信工事施工管理 | 電気通信工事 |
| 造園施工管理 | 造園工事 |
| 建設機械施工管理 | 土木一式・とび土工コンクリート・舗装 |
→ たとえば管工事の監理技術者補佐になれるのは「1級管工事施工管理技士補」であって、1級土木施工管理技士補ではありません。
🔴 4業種は「1級技士補」ではなれません
機械器具設置工事・さく井工事・消防施設工事・清掃施設工事の4業種は、②に限られます。
この4業種には対応する施工管理技術検定がないためです。つまりこの4業種で監理技術者補佐を置くには、監理技術者になれる人をもう1人用意することになります。
→ 4業種では、この制度による人手不足の解消は実質的に期待しにくいことになります。
★「監理技術者補佐」という言葉は、建設業法にも施行令にも出てきません
意外に思われるかもしれませんが、事実です。
当サイトで建設業法・建設業法施行令・建設業法施行規則の全文を取得して数えたところ、次のとおりでした(2026年8月時点)。
| 法令 | 「監理技術者補佐」の出現回数 |
|---|---|
| 建設業法 | 0回 |
| 建設業法施行令 | 0回 |
| 建設業法施行規則 | 8回 |
言葉を定義しているのは施行規則です。
法第26条第3項第2号の規定により監理技術者の行うべき法第26条の4第1項に規定する職務を補佐する者(以下「監理技術者補佐」という。)
(建設業法施行規則第14条の2第1項第2号ヘ)
法律と政令は「監理技術者の職務を補佐する者」としか書いていません。 呼び名がついたのは、施工体制台帳の記載事項を定める省令のほうです。
⚠ ですから「建設業法に監理技術者補佐と書いてある」と言うと、条文を示せません。 正確には「建設業法第26条第3項第2号の者を、施行規則が『監理技術者補佐』と呼んでいる」です。
★同じことは「監理技術者補佐資格」にも言えます。 これも施行規則第14条の2第1項第2号ヘの定義で、「主任技術者資格を有し、かつ、令第29条第1号の国土交通大臣が定める要件に該当すること、又は同条第2号の認定があること」を指します。
施工体制台帳と施工体系図に、名前を書く義務があります
監理技術者補佐を置いたときは、書類に記載しなければなりません。
| 書類 | 書くこと | 根拠 |
|---|---|---|
| 施工体制台帳 | 監理技術者補佐の氏名と、その人が有する監理技術者補佐資格 | 施行規則第14条の2第1項第2号ヘ |
| 施工体系図 | 監理技術者補佐の氏名 | 施行規則第14条の6第2号ニ |
| 帳簿の添付書類 | 上記が記載された施工体制台帳の写し | 施行規則第26条第2項第3号イ |
→ 「実際は置いていないが書類には書いた」という運用はできません。 施工体制台帳は発注者の閲覧対象であり、公共工事では点検の対象です。
「専任」は常駐とは違います
監理技術者補佐は専任ですが、常に現場にいなければならないという意味ではありません。
国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルは、専任について次のように整理しています。
- 専任とは、他の現場の職務を兼務せず、勤務中は常時継続的にその現場の職務にのみ従事していること
- 必ずしも常駐(常時その現場に滞在すること)を必要とするものではない
- 打ち合わせ、書類作成、研修・講習・試験への参加、休暇の取得、働き方改革を踏まえた勤務体系その他の合理的な理由で、短期間(1〜2日程度)現場を離れることは差し支えない(適切な施工ができる体制を確保できる場合)
- それを超える場合、終日離れる日が週の稼働日の半数以上になる場合、周期的に離れる場合は、体制を確保したうえで発注者(下請なら元請)の了解を得ていれば差し支えない
⚠ これは通知(マニュアル)の内容であって、条文ではありません。 条文は「専任」としか定めていません。発注者や許可行政庁の判断が入る余地があります。
実務上、気をつけたいこと
| # | |
|---|---|
| 1 | 主任技術者は対象外。2号の特例は監理技術者だけの制度です(同マニュアル 三(2)②) |
| 2 | 発注者への事前説明が望ましい。情報通信技術の活用方針や、補佐が担う業務について、あらかじめ発注者に説明し理解を得ることが望ましいとされています |
| 3 | 兼務できる範囲は「元請としての職務が適正に遂行できる範囲」。主要な会議への参加、現場の巡回、主要な工程の立ち会いができることが前提です |
| 4 | 監理技術者本人の資格者証と講習は、専任特例を使う場合も必要です。専任特例の場合を含めて、資格者証の交付を受け、監理技術者講習を過去5年以内に受講した人から選任します |
お住まいの都道府県の情報
監理技術者補佐の制度は建設業法で定められており、全国共通です。 ただし、配置を確認する書類の様式や、公共工事での運用は発注者ごとに異なります。
| 都道府県 | ページ |
|---|---|
| 三重県 | 三重県で建設業許可を取るには |
※順次追加していきます。
よくある質問
Q. 監理技術者補佐を置けば、監理技術者は何現場でも見られますか?
A. 2現場までです。建設業法第26条第4項を受けた施行令第30条が「二とする」と定めています。
Q. 1級施工管理技士補であれば、どの工事でも補佐になれますか?
A. なれません。工事の種類ごとに使える検定種目が指定されています(令和2年9月30日国土交通省告示第1057号)。たとえば管工事なら1級管工事施工管理技士補です。また機械器具設置工事・さく井工事・消防施設工事・清掃施設工事の4業種では、1級技士補では補佐になれず、監理技術者の資格を持つ人に限られます。
Q. 監理技術者補佐は、主任技術者を兼ねられますか?
A. 監理技術者補佐は施行令第29条第1号により、その工事の主任技術者の資格を有していることが前提です。ただし補佐はその現場に専任で置かれるため、他の現場の主任技術者を兼ねることはできません。
Q. 現場が1つしかない場合でも、監理技術者補佐を置けますか?
A. 置けます。ただしその場合、その監理技術者は他の現場を兼務することができません。
Q. 「特例監理技術者」という言葉を見かけますが、同じものですか?
A. 監理技術者補佐を置いて兼務する監理技術者を指す呼び方として使われることがあります。ただしこの語は、建設業法・施行令・施行規則のいずれにも出てきません。令和7年1月28日最終改正の監理技術者制度運用マニュアルでも使われていません(当サイトで全文を取得して確認)。書類や契約で使う際は、相手と意味を確認してください。
Q. 監理技術者補佐を置いたのに書類に書かなかったらどうなりますか?
A. 施工体制台帳・施工体系図の記載事項は施行規則で定められています。記載を欠くと建設業法違反となり、監督処分の対象になり得ます。公共工事では点検の対象にもなります。