決算変更届は、毎事業年度が終了してから4か月以内に提出する義務があります(建設業法第11条第2項)。未提出のままでは更新申請を受け付けてもらえません。ただし、何年分たまっていても、さかのぼってすべて提出すれば更新は可能です。
「更新の準備をしようとしたら、決算変更届を1度も出していなかった」
建設業許可でいちばん多いつまずきが、これです。
まず知っておいてほしいのは、取り返しがつかない話ではないということ。さかのぼって出せば更新できます。
問題は時間です。ここから逆算して動く必要があります。
決算変更届とは何ですか?
毎年の決算内容を、許可行政庁に報告する届出です。
「事業年度終了届」「決算報告」とも呼ばれます。新規申請や更新とは別に、毎年提出する義務があります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 毎事業年度が経過してから4か月以内 |
| 根拠 | 建設業法第11条第2項 |
| 提出先 | 許可行政庁(知事許可なら管轄の窓口) |
| 手数料 | 不要(0円) |
| 工事の実績がない年度 | それでも提出が必要です |
手数料はかかりません。 それでも未提出が多いのは、単純に知られていない・忘れられているからです。
出していないと、どうなりますか?
3つの影響があります。
① 更新申請を受け付けてもらえない
これが実務上いちばん重い影響です。
決算変更届が未提出の年度があると、更新申請の前にすべて提出する必要があります。
「更新のときにまとめてやればいい」と考えていると、書類作成が間に合わず、許可が失効します。
② 罰則の対象になる
建設業法第50条により、6月以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。
建設業法第50条(抄)
次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、六月以下の拘禁刑又は百万円以下の罰金に処する。
二 第十一条第一項から第四項まで(略)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出したとき。
実際に罰金が科されるケースは多くありませんが、条文上は明確に罰則の対象です。
③ 指導・監督処分の対象になる
期限内に提出されない場合、まず個別に指導が行われます。
それでも改善されない場合は、建設業法第28条に基づく監督処分が行われることがあります。
さらに、経営事項審査(経審)を受けられないため、公共工事の入札に参加できません。
公共工事を扱う会社にとっては、これが最も直接的な打撃になります。
何年分もたまっていますが、更新できますか?
できます。さかのぼってすべて提出すれば更新申請が可能です。
未提出が3年分あれば3年分、5年分あれば5年分を、それぞれの年度の書類として作成して提出します。
「まとめて1枚で」というわけにはいきません。年度ごとに一式が必要です。
ここで問題になるのが作業量です。
| 未提出の年数 | 作成にかかる期間の目安 |
|---|---|
| 1年分 | 数日〜2週間 |
| 3年分 | 1〜2か月 |
| 5年分 | 2〜3か月 |
更新の締切は、有効期間満了日の30日前です。
3年分たまっている状態で満了日の2か月前に気づくと、間に合わない可能性があります。
満了日の6か月前には、提出状況を確認してください。
何を作ればいいですか?
法人と個人で必要書類が違います。
法人の場合
| 書類 | 様式 |
|---|---|
| 変更届出書(事業年度終了用) | 別紙8 |
| 工事経歴書 | 様式第2号 |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 様式第3号 |
| 貸借対照表 | 様式第15号 |
| 損益計算書 | 様式第16号 |
| 完成工事原価報告書 | — |
| 株主資本等変動計算書 | 様式第17号 |
| 注記表 | 様式第17号の2 |
| 事業報告書(株式会社のみ。特例有限会社は除く) | — |
| 納税証明書(事業税・県民税) | — |
個人事業主の場合
| 書類 | 様式 |
|---|---|
| 変更届出書(事業年度終了用) | 別紙8 |
| 工事経歴書 | 様式第2号 |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 様式第3号 |
| 貸借対照表 | 様式第18号 |
| 損益計算書 | 様式第19号 |
| 納税証明書(事業税) | — |
※上記は三重県の例です。求められる書類は都道府県によって多少異なります。
時間がかかるのは「財務諸表」と「工事経歴書」の2つです。
決算書をそのまま出せるわけではありません。建設業法で定められた様式に組み替える必要があり、
完成工事高・完成工事原価・兼業事業売上高などを分けて記載します。
この組み替え作業が、慣れていないと最も時間を取られる部分です。
工事経歴書は、どう書けばいいですか?
その年度に施工した工事を、原則として請負金額の大きい順に記載します。
注意点が2つあります。
① 実績がなくても提出は必要です
工事がなかった年度は「実績なし」として提出します。空欄のまま放置してはいけません。
② 少額工事・下請工事の扱いに、都道府県ごとの運用があります
たとえば三重県では、元請の少額工事や下請工事を「一式工事」として計上する際、
県が定めた判断基準に合致するかを確認する必要があります。
この運用は県ごとに違うため、お住まいの県の手引で確認してください。
いま、何をすればいいですか?
| 順 | やること |
|---|---|
| 1 | 許可通知書で、有効期間の満了日を確認する(残り期間で急ぎ方が決まる) |
| 2 | 管轄の窓口に電話し、未提出の年度がどれかを確認する(役所側で記録を持っています) |
| 3 | 未提出年度の決算書一式を用意する |
| 4 | 年度ごとに書類を作成し、提出する |
| 5 | あわせて、役員変更・営業所移転などの変更届の未提出がないか確認する |
2を先にやってください。 「何年分たまっているか」の自己認識が実際とずれていることがよくあります。
役所は提出記録を持っているので、電話で確認できます。
3年分以上たまっていて、更新まで半年を切っている場合は、行政書士への依頼を検討したほうが確実です。
財務諸表の組み替えは、慣れている人なら1年度あたり数時間で終わる作業です。
→ 行政書士に頼むといくら?(決算変更届の代行は1年度あたり3〜5万円程度が目安です)
お住まいの都道府県の情報
必要書類と工事経歴書の運用は、都道府県によって異なります。
| 都道府県 | ページ |
|---|---|
| 三重県 | 三重県で建設業許可を更新するには |
※順次追加していきます。
よくある質問
Q. 決算変更届に手数料はかかりますか?
A. かかりません。0円です。
Q. 工事の実績がまったくない年度も提出が必要ですか?
A. 必要です。実績なしとして提出します。
Q. 顧問税理士に作ってもらえますか?
A. 決算書の作成は税理士の業務ですが、建設業法の様式への組み替えと届出書の作成・提出は行政書士の業務です。税理士から決算書を受け取り、そこから組み替える流れになります。
Q. 提出が遅れただけで、許可が取り消されますか?
A. 遅れただけで直ちに取り消されることは通常ありません。まず指導が行われ、改善されない場合に監督処分の対象となります。ただし更新はできませんので、放置は避けてください。
Q. 決算期を変更した場合はどうなりますか?
A. 決算期の変更は定款変更にあたるため、別途変更届が必要です。あわせて窓口にご確認ください。