建築一式工事は、請負代金1,500万円未満(税込)なら許可がなくても請け負えます。ただし「規模が大きい工事」という意味ではありません。総合的な企画・指導・調整のもとに建築物を建設する工事を指し、リフォームや専門工事を単独で請け負う場合は、原則として500万円基準で判定されます。
「うちは建築だから1,500万円まで大丈夫」 ——これがいちばん危険な思い込みです。
建築一式工事は金額の大きさで決まる区分ではありません。工事の性質で決まります。
この記事では、どこで線が引かれるのかを整理します。
建築一式工事とは、どういう工事ですか?
総合的な企画、指導、調整のもとに建築物を建設する工事です(建設省告示第350号)。
建設業許可事務ガイドラインでは、次のように整理されています。
- 2つ以上の専門工事を有機的に組み合わせて、社会通念上独立の使用目的がある建築物を造る工事
- 必ずしも2以上の専門工事が組み合わされていなくても、工事の規模・複雑性等からみて総合的な企画、指導及び調整を必要とし、個別の専門的な工事として施工することが困難と認められる工事
典型例は、元請として建物一棟の新築を請け負うケースです。
「総合的な企画、指導及び調整」とは、具体的には元請が自ら施工計画の作成・工程管理・品質管理・安全管理・技術的指導等を行うことを指します。
つまり現場を取りまとめる立場にあるかどうかが判断の軸です。
許可が不要な範囲は?
| 工事の種類 | 許可がなくても請け負える範囲 |
|---|---|
| 建築一式工事 | ① 請負代金 1,500万円未満(税込) ② 請負代金にかかわらず、木造住宅で延べ面積150㎡未満 ※ ①②のいずれかに該当すればよい |
| 建築一式工事以外 | 請負代金 500万円未満(税込) |
②の「木造住宅で延べ面積150㎡未満」は、金額を問いません。
木造で150㎡未満の住宅であれば、請負代金が2,000万円でも許可は不要、ということになります。
ただし「木造住宅」の定義(主要構造部が木造で、住宅・共同住宅・店舗等との併用住宅で延べ面積の1/2以上を居住の用に供するもの)に当てはまる必要があります。
★リフォームは、どちらで判定しますか?
多くの場合、500万円基準です。
リフォーム工事は、内容によって次のように分かれます。
| リフォームの内容 | 判定 |
|---|---|
| 内装だけの改修 | 内装仕上工事 → 500万円基準 |
| 屋根の葺き替えだけ | 屋根工事 → 500万円基準 |
| 水回りの入れ替えだけ | 管工事 など → 500万円基準 |
| 建物全体の大規模改修(複数の専門工事を組み合わせ、総合的な企画・指導・調整が必要なもの) | 建築一式工事にあたりうる → 1,500万円基準 |
「リフォームだから建築一式」ではありません。
専門工事を単独で請け負っているなら、それは専門工事です。
判断に迷う場合は、必ず窓口に相談してください。
手引にも「業種の区分については、無許可営業、技術者配置義務違反、一括下請負等の法令違反に直結するため、
関係法令等に基づき適切に整理する必要がある」「疑義がある場合は個別に各建設事務所へ相談してください」と明記されています。
★建築一式の許可があれば、何でも請け負えますか?
いいえ。ここが最大の落とし穴です。
一式工事の許可のみを受けている場合、その一式工事全体の完成は請け負えますが、
一式工事を構成する個々の専門工事を「単体で」請け負うことはできません。
具体例で説明します。
| ケース | 建築一式の許可だけで請け負えるか |
|---|---|
| 元請として、一棟の住宅の建設工事を請け負う | ○ 請け負える(大工・内装・屋根などの許可は不要) |
| 建築一式工事の下請人として、大工工事(500万円以上)を請け負う | ✕ 大工工事業の許可が必要 |
| 住宅リフォームの元請として、内装仕上工事(500万円以上)を請け負う | ✕ 内装仕上工事業の許可が必要 |
つまり——
一棟丸ごとなら建築一式でOK。
バラして専門工事だけを受けるなら、その業種の許可が必要。
同じことは土木一式にも当てはまります。
土木一式の許可を持っていても、土木系の各専門工事(500万円以上)を施工するには、各専門工事の許可が必要です。
附帯工事なら、許可がなくても請け負えます
業種別許可制度には例外があります。それが「附帯工事」です。
附帯工事とは、主たる建設工事の施工により必要が生じた他の従たる建設工事、
または主たる建設工事を施工するために必要が生じた他の従たる建設工事であって、
それ自体が独立の使用目的に供されるものではないものをいいます。
手引に載っている具体例
家の雨漏りがひどいので屋根の改修工事を請け負った際、その屋根工事の一部に塗装が必要になった場合、
主たる工事である屋根工事と一体として、従たる工事である塗装工事を併せて請け負うことができます。
このとき塗装工事は附帯工事となり、屋根工事業の許可があれば、塗装工事業の許可がなくても差し支えありません。
判断基準は金額の多寡ではありません。
注文者の利便や請負契約の慣行等を基準に、一連または一体の工事として施工することが必要または相当と認められるかが総合的に検討されます。
ただし条件があります
500万円を超える附帯工事を施工する場合は、次のどちらかが必要です(法第26条の2第2項)。
- 主任技術者または主任技術者に相当する者を置いて、自ら施工する
- その専門工事の許可を受けた建設業者に下請けに出す
「附帯工事だから何をしてもいい」わけではない、ということです。
お住まいの都道府県の情報
業種の区分に迷ったときの相談先は、都道府県の建設事務所等になります。
| 都道府県 | ページ |
|---|---|
| 三重県 | 三重県で建設業許可を取るには |
※順次追加していきます。
よくある質問
Q. 鉄骨造の住宅で延べ面積140㎡です。金額を問わず許可は不要ですか?
A. 「木造住宅で延べ面積150㎡未満」という要件なので、鉄骨造は該当しません。1,500万円基準で判定されます。
Q. 建築一式と建築工事業は別のものですか?
A. 同じものです。許可の業種名は「建築工事業」で、その業種が扱う工事の種類が「建築一式工事」です。
Q. 建築一式の許可を持っていれば、専門工事の許可は取らなくていいですか?
A. 一棟丸ごとの元請なら不要ですが、専門工事を単体で500万円以上請け負うなら、その業種の許可が必要です。実務上は、よく請け負う専門工事の許可を併せて取っておく会社が多くあります。
Q. 「総合的な企画、指導及び調整」をしているかどうかは、誰が判断しますか?
A. 最終的には許可行政庁の判断になります。判断に疑義がある場合は、契約前に窓口へ相談してください。
Q. 建築一式で工事経歴書に計上できる工事の基準はありますか?
A. 都道府県ごとに運用があります。三重県では、元請の少額工事や下請工事を一式工事として計上する際の判断基準を定めており、県の資料で公開されています。