建設業という業界の特殊性として、大手ゼネコンから下請、孫請、ひ孫請・・・と重層的なピラミッド構造となって工事が行われていきます。下層の方では、これまで求められていなかった建設業許可も、今後は許可を持っていないと工事に入れないという風潮があります。建設業界がいかに成熟しようとも、消費者保護の声は大きく、この大きな流れに抗うことは難しいでしょう。
また、公共工事にしても民間工事にしても、好不況に大きな波があり、今日の発注者が明日は下請となることもあり、業界全体で業界を支えているところがあります。つまり、今後の建設業界全体の発展を考えれば、自社だけでなく、建設業界を見渡し、できるだけ建設業許可を取りやすい環境づくりをしていかなくてはいけません。
建設業の許可を取るときに、ハードルとなるのは、なんといっても経験を証明する資料を提示しなければならない点です。
残念ながら、これらのハードルを越えるウルトラCのような裏技はありません。 しかし、建設業の許可を取りやすくするために将来的な準備をしておくことはできます。
許可申請のご依頼を受けても、経験を証明する資料がないということが非常に多くあります。
日頃の業務を通じて、こうしておけば良かったのに・・・と思う点を挙げてみました。
少しでも参考にしていただければ幸いです。
なお、実務経験の証明については各都道府県での取扱いが異なることが多々あります。例えば、他県では、経管や専技の実務経験の証明は建設業許可を持っている業者でないといけない、ということがあります。また、将来的に取扱いが変わってしまうこともありますので、その点はご了承ください。
まず、経営業務の管理主任者についてです。
合同会社の場合は、経営業の管理責任者としての経験であるために業務執行社員にしなければなりませんが、合同会社の社員は出資をしなければならないので、業務執行社員となる者にとっても負担になるケースがでてきます。ですので、取締役になるのに新たに出資する必要のない株式会社をお勧めします。
ただし、支店を設ける場合の注意点としては、次のよう点があります。
また、個人事業であれば、個人事業主は代表者なので、まだ経営業務の管理責任者の証明をしやすいのですが、補佐経験については同時期に1名のみですし、証明に必要な期間は7年以上になります。
個人事業主やその家族、会社役員であれば、専任技術者としての経験期間に関する工事関係資料や確定申告書等の保管やコピーの取得もやりやすいかと思いますが、一従業員であった場合はなかなか保管しておくことは難しいでしょう。
建設業の許可に限った話ではなくなりますが、円満退社を心がけて頂き、退社後もつながりをもっておきましょう。
現在の職場で10年以上技術者としての経験があれば、工事に関する資料はまだ集めやすいと思いますが、過去の職場にお願いして、工事に関する資料等を出して頂くのは、困難なことが多いです。自らの技術に関することを対外的に証明するものにもなりますので、国家資格への挑戦をお勧めします。
過去に従業員として勤務していた方が、建設業許可を取得するというケースでは、個人事業で建設業を5年経て、経営業務の管理責任者の要件を充たし、国家資格を有していない場合は、実務経験10年のうち5年分の経験が不足します。(この場合でも、専任技術者を雇い入れるという方法はあります。)
過去の経験に関する工事関係の資料や確定申告書の控えを、過去に退職した勤務先にお願いして集めてもらい、お預かりするということになりますが、このようなご協力をお願いすることは、円満な退職をしてないととてもできるものではありません。建設業だけに限った話ではありませんが、人間関係やお付き合いは大切にしておきましょう。
また、自社から独立していった若者達が、将来、建設業許可を円滑に取得することができるよう資料を作成し、長期間保管しておいてあげてください。